ここ数日、朝やお昼寝から目覚めた時に右手がものすごくこわばっていた。

特に中指の関節が全然動かせなくて辛かった。

妊娠に伴うむくみだろうと信じて、食べ過ぎが続いている食事を見直したところ一気に良くなった。今朝は全然痛くない。塩分と甘いパンは敵なのだなあ。

朝食に500kcal以上摂取すると、午前中は調子が悪くて仕方ない。血圧は高いしお腹は張るし、動悸はおさまらない。頭に血が昇る感覚が何度もやってくる。

 

ベビーのための食事は難しい。一度の食事で炭水化物を50g以上摂ってしまうとダメなのだ。

脂質に偏りすぎれば肌がギトギトして身体が重くなる。

タンパク質に偏りすぎれば便秘になる。

果物を食べすぎては果糖を摂りすぎるし、牛乳はすぐ太る。

根菜類は糖質が多い。

卵は飽和脂肪酸が多い。

食塩は1日6.5gまで。

ルイボスティーやチョコレートにも含まれるポリフェノールは1日500mgまで。

脂溶性ビタミンAが豊富な鰻やレバーは食べすぎてはいけない。

水俣病を避けるために水銀の豊富なクジラ、マグロ、金目鯛、メカジキは控えめに食べること。

カルシウムやカリウムは必要だが血中濃度に気をつけなければいけない。

カモミールハトムギも子宮収縮作用があるので飲みすぎてはいけない。

甲状腺がどうたらするからヨウ素の多い海苔や昆布に気を配る。

冷たい飲み物もカフェインも控える。

サプリの鉄は非ヘム鉄が多いからビタミンCと一緒に摂り、なるべく赤身肉から鉄分を補うこと。

血糖値が上がるからGI値の低いものから食べ進めること。ヨーグルトや牛乳のミルクプロテイン、食物繊維は血糖値の上昇を穏やかにしてくれる。

 

とにかくベビーのためにできることは厚生労働省が定める栄養評価基準を守り旬の野菜・果物を選びいろんな種類のタンパク質を食べること。

ルールの一つひとつは簡単なのだけれど、では全てを守ろうとすると多すぎて何かしらアウトになる。

本当に辛い。双子の妊婦は辛いのだ。

東京都のコロナ感染者数が4時45分に発表されるということを知ってから、news every.を4時40分から10分だけ見ることが毎日のささやかな楽しみになっている。

8月は数字がどんどん膨らんで、新生児が助からなかったり自宅療養のおじいさんが気づいた時には亡くなっていたり、とにかく暗いニュースが多くてみんな怒っていた。

 

同居する家族もずっとコロナの感染者数の話をするし、本当に気が滅入った。いくら人数が増えたって減ったって、私たちが対策できることは今まで通り手洗い消毒マスク三密回避しかない。ワクチンの接種率や感染者数のスポット数値を見たって分析をしないのでは、また妊婦のためのワクチン情報を教えてくれたり、不安な気持ちに寄り添ってくれたり、優先接種してもらえるクリニックやツテを探してくれたりしないということであれば、口を紡いで欲しいと何度も思った。ただ数値が毎日更新されるという事実に毎日圧倒され、そして大きな声で文句を言い、感嘆し、噂レベルの「もうあの病院は満床だって」を毎日聞かされる。

知らせないでほしかった。ひたすら不安を煽るのはやめてほしいとずっと感じていた。

8月、もしこの県で妊娠中にコロナにかかった場合どうなるのかをすごく調べた。よくわからなかった。周産期センターにたらい回しにされ、陣痛に一人で耐えながら自宅で産み落とし、まだ温かく息をする我が子を自分の腕の中で看取る覚悟をしなければならないのかもしれない、ということがわかった。死産届と火葬も調べてみて、喉が詰まるような感覚に襲われて、苦しくなってPCを閉じた。

とにかく今できる備えを、と思い、泣きながらエンディングノートを書いた。死んだときにもらえる助成金や必要な手続き、保険、銀行口座の預金などの情報をもろもろA4コピー用紙にまとめた。出産準備のはずがどうして私は死んだ時の準備を整えているのだろう、こんなことしたくないのに、どうして、どうしてとずっと苦しかった。何にも楽しいことのない夏だった。

8月は、9月は、本当に苦しかった。

だから感染者数が減っていることを窺い知れるのはとても嬉しい。怒る人が減るから。不安な人、忙しい人が減るから。みんなが楽しく笑って暮らせる日々を願っている。

夫と3ヶ月ぶりに会った。緊急事態宣言が明けてから私の帰省先に来てくれた。どれだけこの日を待ちわびていただろう、毎日カレンダーを眺めては指折り数え弱音と不安と心細さを飲み込んできた。迎えに行った駅で改札越しに見えた瞬間、心臓が跳ねた。

彼は春に頑張っていた筋トレプログラムを終えてから運動をそんなにしていないようだった。コロナデルタの外出自粛制限もあったし、外に出て動ける気候でもなかったし、リングフィットアドベンチャーもナイキプログラムも起動していないのだろう、最後に見た姿よりもなんだかだいぶ大きくなったように感じられた。

私も私で妊娠週数が進み、お腹が非常に目立つようになった。300g〜400gしかなかった双子は共に2000gを記録している。みんな大きくなった。

でもそんなのどうでもいい。とにかく嬉しかった。失敗した前髪もワクチンの副反応もどうでもよかった。郵便物を色々受け渡して、ご飯を食べて、産院を確認して、ドトールでコーヒーを飲んだ。

特別なイベントもお買い物もなかったし部屋も片付けきれなかったけれど会えただけでいいのだ。夫といる2日間、ベビーズは二人ともよくしゃっくりをしていた。足でお腹を蹴っていた。そういうのに触れられる時間を過ごせたことがたまらなく幸せだった。写真を1枚だけ撮れたこともよかった。初めての家族写真だ。こんな穏やかな時間、後にも先にもない。暮らしの全てを抱きしめていられるこの瞬間がたまらなく愛おしく感じて涙が出る。

日曜日の夕方、とうとう私にも体力の限界がきて少しだけ昼寝をした。一戸建てが欲しいとか最近はビットコインが爆上がりしているとか最新のダイソン加湿空気清浄機がすごいとか、他愛もない雑談をしているうちにうとうとして、彼の横で眠ってしまった。寝落ちする瞬間に見えた腕時計で10分後に起きようと心に決めたはずなのに、次に目を開けた時には40分も経っていた。

あんなにぐっすり昼寝をできたのはいつぶりだったんだろう。この3ヶ月間ですっかり蓄えられた彼の二の腕とお腹がふわふわとしてとても気持ちよかった。

目が覚めてから、きっと赤ちゃんも母親のおっぱいと勘違いして、あなたの腕の中でたくさん眠るだろうねと笑いあった。

10年ぶりに実家に帰ってきてから3ヶ月が経つ。一人暮らしを6年、夫と二人暮らしを4年経て、自分の食生活と洗濯物の畳み方はもちろん、タオルを洗う頻度やビニール袋のまとめ方すらもすっかり変わってしまったことを実感する。

 

都会は便利だ。徒歩圏内にコンビニがありスマホから大抵の食事をデリバリーできる。今の私は親兄弟に頼まないとマクドナルドすら自由に食べに行けない。プリングルスサワークリームオニオンが食べたくなっても、母親に「そんなの食べたら体に毒だよ」と一言頂戴した上で健全な時間にセブンイレブンへ車を走らせていただく必要がある。

 

気に食わないことはたくさんある。「安いから」と買って満足した食材が冷蔵庫を圧迫していること、着なくなった服を捨てずにおくあまり8畳客間が全てウォークインクローゼットになっていること。1週間分床に積まれたままの新聞紙だって憎たらしい。

客間だけじゃない。私の部屋もいつの間にか物置になり、段ボールと放り投げられたプラスチック製の何かが雑に積み上げられている。テトリスだったらすぐ終わる。ホコリもすごいし自分の部屋が雑に扱われ潰されたことがひどく悲しい。

 

もう口癖なのだろう両親は毎日朝も夜もお互いの文句を言い続ける。

買い物の内容、ゴミの捨て方、廊下に置かれた荷物、お皿の洗い方、夕食の食べ方。

あまりにも毎日同じことに文句を言ってい流ものだから、聞いていて辛くなる時がある。どうしてそんなに文句ばかりの相手と結婚したのか不思議に感じる時もある。お互い歩み寄るのを諦めて、文句を言い合い聞き流し合うのは辛くないのか。許せると思えたから結婚したのではないのか。私にはわからない。